FIREの計画を立てる場合、多くの場合は現状の生活費をベースに、年間の生活費の25倍の資産を作ることを目標にします(いわゆる「4%ルール」)
しかし、子持ちの家庭では子供の成長に従って、教育費の出費額が大きく変化する点を考慮に入れないといけません。すなわち、今後ずっとかかっていく生活費とは別口で教育費を用意する必要があります
しかも、子供の教育費の見積もりは以下の様な難しさがあります
- 子供を育てた経験が無いので、どの程度費用が掛かるかイメージが沸かない
- 節約すると子供の将来にダイレクトに影響がある(=節約しにくい)
- 逆に、お金をかけようと思うと無限にかけられる(=「ここは節約しない」という安易な解決策が使えない)
教育費のイメージ
1点目の難しさは調べることで解決します
「子供 教育費」などのワードでググった時に出てくる多くの記事で参照されている、政府の出している統計数値があり、それを見れば概ねの金額感はつかめます。
「子供の学習費調査」 by 文部科学省https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00001.html
この調査では、学校教育費(授業料や学用品代、修学旅行代等)、学校給食費、学校外活動費(習い事、塾、参考書代等)を、小学校~高校の期間で公立・私立で分けた数値を出しています
これは政府が出しているものなので、マーケティング目的で変に数値が歪められていないという点では信頼性の高いデータとして参照できるでしょう
一方で、基本的には平均値を算出しているデータなので、必ずしも自分の方針に合った金額が載っている訳ではなく、内容をしっかり検証していく必要があります
教育費をどのくらいかけるか
2点目、3点目は、どのくらい教育費にお金をかけたいかという方針の問題です
お金の無い家庭でも、すべて公立で高校くらいまでは通うのが一般的でしょう。なお、高校まで公立で通った場合の平均的な教育費はトータル500~600万円のようです
一方で、かなり高所得(年収数千万円以上)の家庭では、教育費に莫大なお金を使います。小学校からインターナショナルスクールに入れたり、高額の習い事をさせたりすれば、いくらでもお金をかけられるのです
このように、教育費にかける金額は、その家庭の方針によって非常に幅があるため、自分たちが教育費にどの程度のお金をかけるのかは、意思決定の問題になります
私個人としては、自分が与えられたのと同程度の機会は子供に提供したいと考えています
実際には私は小学校から大学まですべて公立の学校に進学しましたが、高校では公立に受からなければ私立に進むことも許されていましたし、理系を選べば大学院へも進学させてもらえたと思います
自分の子供に対しても、それを許容できるように予算を組んでいきたいものです
最初に結論
最初にこの記事での結論を記載します
- ラッコ家では290万円を6年間の予算として見込む
- 公立小学校6年間の学費の平均は約210万円
- 小学校は公立一択
- 小学校の教育費における論点は、中学受験と習い事をどうするか
小学校の学費(文科省のデータより)
早速データを見ていきましょう
学年ごとの年間の教育費
ぱっと見で私立の学費が高すぎですね。元データを見ると以下の様な事が読み取れます
- 公立と私立の差額が6年間で約800万円
- そのうち授業料・入学金で約330万円
- その他、あらゆる項目で私立の方が費用が高い
- 私立の小学校に子供を入れるような世帯では、教育にものすごくお金をかける
これに加えて、同級生が全員この学費を賄えるような金持ちであるという要素も見逃せません
なんとか頑張ってFIREした一般家庭での暮らしぶりと、私立小学校に子供を入れられるような家庭の子供では、生活水準が大きく違うことが想定されます。子供が無用な劣等感を抱かないようにするのも大変かもしれません
そのような点を考慮していくと、小学校は公立一択でしょう
また、公立の学費は毎年それほど金額の上下はありませんが、以下の様な事が読み取れます
- 1年生はランドセルの購入などの初期費用が掛かるため、ややお金がかかる
- 5~6年生では塾に通う子供が増えてくることや、修学旅行、卒業アルバム等の費用が掛かるため、お金がかかりやすい
内訳と時系列
この統計調査は2年に1回行われているため、過去のデータも参照することができます(2020年はコロナの影響もあり1年遅れている)
このグラフと元データの内容から、以下の様な事が読み取れます
- 10年間を振り返ると、少しずつ費用が上がっている
- 学校教育費は学用品代を中心にインフレが徐々に進行している
- 給食費はあまり変わらず。2021年に大きく下がっているのは、コロナ禍で通学日数が減った影響か、それとも給食費無償化の流れか
- 学校外活動費も増額傾向。2021年に増えているのはやはりコロナの影響か(家庭学習に割く時間とお金が増えたのか)
さらに詳細な内訳ごとに検証する必要がありますが、傾向としてインフレが進んでいるという点は考慮しておいた方が良いかもしれません
教育費データの検証
上記のデータから、公立小学校に6年間通わせた場合の学費は平均210万円程度であることが分かります
しかし、これは実際に自分の家庭でかかる金額が210万円で収まるという意味ではありません
概ねみんな平均値と同じ出費をしているようなものであれば、平均値を参考にすることができますが、個人差の大きいような項目では、自分たちがいくらかけようと思うのかを考慮しなければなりません
以下では、自分の家庭の予算計画を作るにあたって、小学校の教育費をいくら見積もればいいのかという観点で内容を検証します
学校教育費
年間の学校教育費(合計6.6万円)の内訳は上記の通りです。以下で各項目の妥当性を検証していきます
修学旅行費
この項目には、遠足・社会科見学・修学旅行の費用が含まれます
年額というよりは6年間の総額で考えるとわかりやすいでしょう。6年間で31,698円(5,283円×6年)となります
小学校の遠足等の費用は平均して1,000~2,000円程度がせいぜいのようです。遠足が年に2回として、修学旅行のある6年生を除くと毎年3,000円×5年で、約15,000円程度になります
修学旅行の費用は結構高く、20,000円くらい見積もっておく必要がありそうです(各地の教育委員会の規定に従うようなので、良く学校によってそこまで大きく変わらないのではないかと思います)
公立の学校に行く限り、遠足・修学旅行でびっくりするような金額になる可能性は低いでしょうから、この項目は統計データの通りととらえていいように思います
学校納付金等
この項目にはPTA会費や児童会費、寄付金等が含まれます
実際に小学校に通う子供がいないと、そもそもどのような項目が実際にかかってくるのか分かりにくいですね。寄付金とかは公立の小学校であればほとんどかからないと思いますが
PTA会費は全国平均で年間3,000円くらいかかるようです
そのほかにも少しずついろいろなお金がかかることは想定されますが、毎月数千円請求されるような小学校というのも考えにくいでしょう(公立であればそんな金額は払えない家庭が一定数いるはずなので)
それらを踏まえると、全国平均の8,113円というのはやはり現実に近い金額であると想像できます
学用品費
この項目は、リコーダーや体操着、文房具等、学校で必要になる教材費が含まれます
内容を細かく見ていくと膨大な品目になることが想定されますが、これもやはり全員が購入する必要があるものであるという観点から、平均値と全く異なる水準の金額を負担しなければならない可能性は低いと考えられます(払えない家庭があるので)
また、公立小学校のカリキュラムが決まっている以上、みんな似たような道具を使って授業を受けるので、そういう意味でも似たり寄ったりの費用となることが想定されます
教科外活動費
この項目には、クラブ活動、学芸会・運動会・芸術鑑賞会、臨海・林間学校等の費用が含まれます
自分の朧げな記憶をたどってみても、そもそも上記の項目でお金がかかるイメージがあまりありません。せいぜい林間学校で移動費・宿泊費くらいでしょうか
6年間トータルで1,4000円弱なので、平均としてはやはり大してお金がかからないのでしょう
クラブ活動の内容等によっては金額がブレる可能性はありますが、そもそもの金額が少額なので、2倍になっても全体としては大きな問題は無いと考えられます
通学関係費
この項目には、交通費、ランドセル、制服代、かばん代、雨具代等が含まれます
私服で徒歩圏の学校に通っていた自分の子供時代を振り返ると、ランドセル代と傘代くらいしかかかっていない気がします
これだけの情報だと、6年間で平均12万円強という数値がどう考えてもおかしいので、少し調べてみました
どうやら、地方だと公立小学校でも制服のある学校があるみたいですね
都会で制服の無い小学校に通えば平均の半分程度の金額で済みそうですが、地方で交通費と制服代のかかる学校に行くと少し費用が増えそうです
私はFIRE後もある程度都会に住む想定をしているので、制服の無い小学校に行く可能性が高いのではないかと想像しています
もし制服代がかかる場合でも、6年間で数万円の増加、私服代も一部浮くことを考えれば、そこまで心配する必要は無いかもしれません
結論、学校教育費は、統計データの平均値程度のお金を準備しておくことで概ね大丈夫でしょう
給食費
給食費は上の方で示した通り、過去4.0~4.5万円程度の金額で推移しています
読売新聞の記事によると、2021年度で全国で最高値だったのは長野県で年間約6万円だったようです
給食費に関しては、全国で無償化の流れが進んでいます
少し古いデータですが、文部科学省の調査によると、2017年度に給食費を無償化している自治体は全国で76カ所あったようです
一方で、東京都23区を中心に給食費を無償化する/した自治体が直近でも増えており、全国的にもこの傾向は続いていくでしょう
予算としては給食費も考慮する必要があるものの、負担しなくてもいい可能性は相応にあると思われます
学校外活動費
学校外活動費に含まれるのは、塾や習い事の費用、家で勉強するときの教材費などです
結論から言うと、学校外活動費は個人差が非常に大きく、どのような方針でお金をかけるのかしっかり考えないといけません
統計データを読み解くと、以下の様な事が言えます
- 学年が上がるにつれて、トータルの費用が増える傾向がある
- 学年が上がるにつれて、スポーツ等の習い事から勉強にシフトする傾向がある
- お金をかけている家庭とそうでない家庭の差が大きく、平均値に意味が無い
- 所得の高い家庭の方が、お金をかけている
学年別費用
上記は、公立小学校の学校外活動費の平均額推移です
習い事等は3年生をピークに徐々に減少していきますが、補助学習費(塾や通信教育)の金額は逆に増加していくことで、合計としては学年が上がるにつれて費用が上がっていきます
これは、中学受験をする家庭を中心に、高学年になると塾に通う子供が増えていき、その分習い事にかけられる時間が無くなっていく結果ではないかと思います
お金をかける家庭とそうでない家庭の差が大きい
補助学習費は主に塾代と通信教育・家庭教師費で構成されています
データを見ていくと、各家庭でのお金のかけ方には大きく偏りがあるようです
通信教育・家庭教師
上記は、通信教育(と家庭教師)の費用をどの程度かけているのかという分布データです
ここから読み取れるのは以下の3点かと思います
- 通信教育等にお金をかけていない家庭が6割弱
- 通信教育を利用している家庭は全体の4割弱
- 家庭教師を利用している家庭も若干存在
通信教育大手の進研ゼミのHPを見ると、小学生の講座の年額は4~8万円程度のようです(学年が上がると高くなっていく)
このグラフの5万円未満~10万円未満の人たちが支払っている金額とちょうど整合します
また、家庭教師大手の家庭教師のトライで小学生向けの講座を調べると、「月々1万円~」という案内が出てきます。つまり、家庭教師を雇った場合に年間でかかる費用は10万円以上と考えるのが妥当ということでしょう
このグラフの20万円未満より高い部分は家庭教師代である可能性が高いですね
学習塾
このグラフをベースにいろいろと調べた結論は以下の通りです
- 中学受験のために塾に通う場合、3年間で200~250万円くらいかかる
- 40万円未満で塾に通っている子供は、恐らく受験目的ではなく、日々の学習をサポートする塾に通っている(もしくは低学年で本格的に受験勉強を始めていない)
この項目は中学受験をするか否かで全く違う水準感になります
中学受験をしない場合でも、補習塾の金額は少額ではないので、全く塾に通わない家庭と比べると家計に与える影響は大きく違うでしょう
年収別
このグラフは、公立小学校における世帯年収別の補助学習費(塾・通信教育など)の平均値を示しています
収入レベルによってかける金額にかなり大きな差がありますが、高年収世帯の方が子供を中学受験させる割合が高く、高額な塾代が平均値を押し上げているのではないかと思います
我が家の予算をどうするか
ここまで見てきたデータを踏まえて、以下の通り予算を立てました
- 合計額は290万円としました
- 内訳は、学校教育費70万円、習い事145万円、学習補助費75万円
- 中学受験をする場合には、4年生以上の学校外教育費の大半が塾に費やされることになるため、追加で約150万円かかる可能性も
学校教育費は上記で見てきた通り、平均値程度かかることを見込んでおけば良いだろうと考えました
また、ここ10年で年平均1.8%程度インフレしているため、ザックリ10年分のインフレを全体で織り込みました
項目によっては平均値より大きくなる可能性もありますが、給食費が無償になるという可能性もあるので、トータルではいい線言っているのではないでしょうか
習い事は、月1万円程度のものに2つ通わせられる金額を設定しました
個人的には習い事には積極的な気持ちになれませんが(私のところでは、6年間水泳を習った結果、25メートル泳ぎ切れないおじさんが発生しました)、妻との折り合いがあるため、ある程度は妥協が必要でしょう
子供が積極的に習い事をしたいと言い出した場合には、もちろん応援したいところです
学習補助費は、進研ゼミ代+毎月5千円という金額を設定しました
進研ゼミをやらせたいわけではないですが、塾に通わずに何かしら通信教育を利用する場合にはこの程度は予算に入れておく必要があるでしょう
また、毎月の5千円は特に決まった使い道があるわけではないものの、子供の勉強に必要なものがあれば買ってあげられるようにしたいということで計算に入れました
FIREをすることで自分が子供の教育に関わる時間を手に入れることができる想定をしています。子供が幅広い知識を身に着けたり、経験を積むことができるように、毎月の5千円はうまく使っていくようにしたいです
以上